2011年08月05日
川本 裕子 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 | 経歴はこちら>> |
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大震災による影響に関し、電力会社の幹部などが「想定外」という表現を使ったことは様々な波紋を呼び、議論を巻き起こした。これまでの議論を振り返ってみると、問題は大きく分けて二つあるように思う。第一は、今回の震災は事前に予想できたかどうかだ。予見可能性の問題ともいうことができ、責任論の判断にも及ぶ話だ。第二は、予想できたかどうかに関わらず、それを国であれ、民間企業であれ、経営の立場にある人間が軽々に「想定外」と口にしていいかという問題だ。
第一の問題は基本的には法律論であり、科学的な予見可能性のみならず、「予見すべきであったか」「予見することが期待できたか」という判断が問われる。事故が起こってしまってからの後知恵なら何とでもいえる、という冷めた見方もある一方で、事故を予想することが十分可能な材料が存在していたのか、などの事実の検証が不可欠だろう。
これに対し第二の問題は、国家や企業の経営の本質的部分である「リスク管理」に直結する。国家や企業を取り巻く環境には不確実性や予想困難な事態が多いということが基本的な出発点だ。この認識を欠く場合には指導者の責任はそもそも語れない。国家や企業がそうした変転を常とする環境の中でどうやって生き抜いていくのかを考え、決断し、行動を起こすのが組織のトップの仕事である。当然、そこでは常に「最悪のシナリオ」を思い描き、その下でも生き残れる手を打っていくということが求められる。
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