新聞案内人詳細

2011年08月05日

川本 裕子 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 経歴はこちら>>

「想定外」の考察(1/3)

 大震災による影響に関し、電力会社の幹部などが「想定外」という表現を使ったことは様々な波紋を呼び、議論を巻き起こした。これまでの議論を振り返ってみると、問題は大きく分けて二つあるように思う。第一は、今回の震災は事前に予想できたかどうかだ。予見可能性の問題ともいうことができ、責任論の判断にも及ぶ話だ。第二は、予想できたかどうかに関わらず、それを国であれ、民間企業であれ、経営の立場にある人間が軽々に「想定外」と口にしていいかという問題だ。

 第一の問題は基本的には法律論であり、科学的な予見可能性のみならず、「予見すべきであったか」「予見することが期待できたか」という判断が問われる。事故が起こってしまってからの後知恵なら何とでもいえる、という冷めた見方もある一方で、事故を予想することが十分可能な材料が存在していたのか、などの事実の検証が不可欠だろう。
 これに対し第二の問題は、国家や企業の経営の本質的部分である「リスク管理」に直結する。国家や企業を取り巻く環境には不確実性や予想困難な事態が多いということが基本的な出発点だ。この認識を欠く場合には指導者の責任はそもそも語れない。国家や企業がそうした変転を常とする環境の中でどうやって生き抜いていくのかを考え、決断し、行動を起こすのが組織のトップの仕事である。当然、そこでは常に「最悪のシナリオ」を思い描き、その下でも生き残れる手を打っていくということが求められる。

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前回の新聞案内人

松山 幸弘
松山 幸弘 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 経歴はこちら>>

総合特区制度と医療

 政府が新成長戦略の柱として創設する総合特区制度の基本方針案が明らかになった。総合特区制度とは、規制緩和や税財政支援を集中させて成長力の高い地域を創出することを目的としたものであり、本年6月に根拠法が・・・>>続き

2回前の新聞案内人

加来 耕三
加来 耕三
歴史家・作家

新幹線の生みの親・島秀雄

 先般、中国東部の浙江省・温州市で高速鉄道の衝突・脱線事故が発生した。  筆者は、昭和39年(1964年)10月1日に開業式をむかえた、世界で初めての超高速鉄道、東海道新幹線の“生みの親”で、国鉄技・・・>>続き

3回前の新聞案内人

池内 正人
池内 正人
元日本経済新聞経済部長・テレビ東京副社長

米ドル基軸制度の終焉 ?

 オバマ大統領とアメリカ議会首脳は7月31日夜、ようやく政府債務限度の引き上げ問題について妥協を成立させた。8月2日までに問題が解決しないと、アメリカ政府は新たな資金調達ができなくなり、国債の償還や利・・・>>続き

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