2012年01月30日
川本 裕子 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 | 経歴はこちら>> |
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あらたにすの私の「新聞案内人」コラムも今日で最終回である。この間、日頃感じる新聞の課題を取り上げてきた。例えば、本当にその時人々に知らせるべき情報、ニュースとすべきものをニュースとしているのか。固定観念に囚われ、安直に「異例」と書いていないか。日本語の壁に守られ、知らず知らずのうちに日本中心の見方に陥っていないか。記者クラブ制度に依存しすぎて政府・権力側の誘導に安易に乗っていないか。等々である。
最近、元日経新聞記者・牧野氏の書いた「官報複合体」を読んだが、多くの点で筆者も共感できる内容だった。日本の新聞報道の第一線で働いた後、米国でフリーのジャーナリストとして活躍されているその経歴から、日本のメディアの在り方をより客観的にとらえられていて、迫力ある主張を生んでいる。海外メディアのスクープは、政治家や官庁や大企業といった権力が知られたくない情報を暴くことにあるが、日本のメディアは権力側が発表しようとしていることを、他社よりも早く書くことをスクープと呼んでいるとか、アメリカの新聞は内部告発者の匿名性を守ろうとするが、日本の新聞は権力者の匿名性を守ろうとする、といった指摘には特にはっとさせられる。
筆者も日本の新聞の今後に期待し、その将来が日本や世界にとって有意義で価値あるものであってほしいと願っている。そうであればあるほど、今の新聞の現状は構造的な変革を必要とするものではないか、という感を強く持つ。日本の新聞経営は世界でも稀に見る定期購読者人口に支えられてきたが、ウェブ・メディアは今後日本でもますます拡大浸透していく。既存の枠組みを当然視する新聞社の将来は暗い。経営や編集のリーダー層から一線の記者陣に至るまで、根本的な発想転換が求められるのではないだろうか。
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