新聞案内人詳細

2011年07月12日

川本 裕子 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 経歴はこちら>>

シャトル計画終了と日本の「戦略」(2/3)

 一つは、歴史的な視点、すなわち、どのように時代の大きな流れをつかむか(パースペクティブ)である。英国The Economist誌は、先週号の巻頭でこの問題を取り上げ、その表紙に“The end of the Space Age”(宇宙時代の終わり)というタイトルを掲げた。

   3万6000キロの内と外

 戦後様々な技術開発が進められてきた宇宙空間の利用を振り返れば、静止衛星軌道3万6000キロメートルの内側では確かに通信から産業、軍事に至る広範囲で革命が起こり、今後とも人類の挑戦は続くだろう。他方、それより外の宇宙空間の利用は人類にとっての「夢」であったことが明確になった、と述べている。すなわち、シャトル計画の終了により、時代としては縮小段階に入ったと考えられるのではないか、という論旨である。国際宇宙ステーションが予定通り2020年に終了すれば、有人宇宙探査は具体的な拠り所を失う。国際的にも巨額な政府予算を投入する機運が大幅に後退しているのは事実だ。

 もちろん、オバマ米大統領は火星有人探査の旗は降ろしていないし、仮に米国やロシアの宇宙への熱意が揺らいだとしても、民間による宇宙飛行プロジェクトや、中国の野心的な有人の月探査実現計画がある。今後とも議論は続くだろうが、大きな時代感覚を持つことは日本の宇宙戦略の議論でも不可欠である。日本のメディアにもこうした巨視的な歴史観を背景に、本質的分析を深めてもらいたい。

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松山 幸弘
松山 幸弘 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 経歴はこちら>>

いつまで先送りするのか

 民主党が6月末に発表するとしていた税・社会保障制度の一体改革案に前回、“また空手形?”と疑問を投げかけた。しかし、事態はより深刻で、国民は空手形すらもらえなかった。改革で最も重要な消費税率引き上げの・・・>>続き

2回前の新聞案内人

加来 耕三
加来 耕三
歴史家・作家

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3回前の新聞案内人

池内 正人
池内 正人
元日本経済新聞経済部長・テレビ東京副社長

非製造業と中小企業向けの対策を

 日本経済は大震災の影響から着実に抜け出しつつある。たとえば日銀が発表した6月の企業短期経済観測調査をみると、大企業・製造業の業況判断DIはマイナス9で、3月調査に比べると15ポイントも低下した。しか・・・>>続き

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