2011年11月14日
川本 裕子 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 | 経歴はこちら>> |
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事は構造問題
英紙が社説で問題解明を訴えたのが10月20日。ようやく10日ほど経って日本の経済紙が社説で取り上げたが、それも大王製紙と一緒に論じられ、海外の報道と比べると遠慮がちの印象だった。日本の多くの新聞が社説で正面からオリンパス問題を議論したのは、粉飾決算を会社が発表したつい最近のことである。そもそも事件の発端の一つのきっかけは、今夏の月刊誌ファクタの記事だったが、なぜ主要メディアではなかったのか。深刻な反省が必要ではないかと思う。記者クラブ批判とも共通するところがあるが、官庁や大企業という「既成秩序」に対し、対等の視点で対峙していく姿勢が弱くなっているのではないか。
企業統治とは「外」の視点からの経営監視の問題である。株主や投資家のみならず、独立取締役、証券取引所、金融規制当局、そしてメディアがどのように経営者の行動を効果的に監視できるかという「構造」がカギを握っている。今回、未解明の粉飾決算に加え、企業統治面での対応の遅れが余計に海外での信頼を失墜させた面は否めない。一企業を超え、日本の企業統治の構造問題として一気に光があてられたのだ。
日本では取締役会を内部昇進者で固め、社外取締役の導入に熱心でなく、外国人や女性の取締役も少数で、多様な視点からの企業経営が損なわれ勝ちだ。また会長が実権をもち、社長がイエスマンの例も多い。そしてメディアは問題の解明に熱心ではない。こうした指摘が火を噴き、今でも収まる気配はない。
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